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収容とは
例えば外国人である本人や配偶者がオーバーステイや一定の刑罰法令に違反している場合、いきなり強制送還(退去強制処分)されるのではなく、多くの場合入国管理局により一時的に身柄を拘束されます。これを収容と呼びます。
(1) 収容にはどのような種類があるか
日本における在留が認められず強制送還されることが決定すると、書面でその旨が通知されます。これを退去強制令書といいます。収容は、この退去強制令書の発付前後で2種類に分かれています。
①退去強制令書発付前の収容
入管法によれば、日本に滞在する外国人が退去強制事由(オーバーステイや一定の刑罰法令違反など)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるときは、その者を収容することができるとされています。この際に入国管理局より発付される令書を収容令書といい、実際に強制送還が決定した際に発付される退去強制令書の前段階のものです。
この収容令書に基づいて収容される期間は30日以内とされていますが、やむを得ない事由があると認めるときは更に30日間延長して合計60日以内収容できるとされています。入国管理局は、収容中の外国人に強制送還処分を下すか在留特別許可を出すかなどの判断をこの最大60日の間に行います。
入国管理局は、退去強制事由に該当すると疑うに足りる相当の理由がある対象者に対して、その収容の必要性の有無にかかわらず全て収容する全件収容主義を採用しています。ただし、退去強制事由に該当すると思われる場合であっても本人が自ら入国管理局に出頭する場合、収容されず在宅で手続が進められるケースも多いようです。もしご自身の配偶者がオーバーステイ等で退去強制事由に該当すると思われる場合は、摘発を待たず出頭するよう促した方がその後の手続に有益かもしれません。
②退去強制令書発付後の収容
入管法によれば、強制送還が決定し、退去強制令書が発付された外国人は、今度は収容令書に代わって退去強制令書により、送還可能のときまで収容されることになります。
収容令書に基づく収容と異なり、退去強制令書に基づく収容は「送還可能のときまで」と特に期限が定められておらず、長期間収容が続くケースも少なくありません。
(2) 収容から解放される手段はあるか
上述のように、一旦収容されると一定期間は収容場所を出ることは出来ません。特に、退去強制令書が発付された後の収容は基本的に強制送還されるまで長期間続き、場合によっては1年以上拘束されるケースもあります。これによる身体的・精神的負担は、本人だけでなく身近な家族にとっても相当なものでしょう。それでは、この収容から解放されるためにはどうすれば良いのでしょうか。
収容から解放されるには、①仮放免許可申請をする、②執行停止の申立をする方法があります。このうち②の執行停止については、既に発付された退去強制令書の取消・無効を求めて訴訟提起した場合にとりうる行政法上の手段ですので、別ページ「在留特別許可・行政訴訟」にて触れるとして、ここでは①の仮放免許可申請についてご紹介します。
2 仮放免とは
(1) 仮放免制度とは
入管法によれば、オーバーステイや一定の刑罰法令違反などで入国管理局に収容されてしまった外国人を解放するための手段として①仮放免と②特別放免を挙げています。このうち②の特別放免は「退去強制を受ける者を送還することができないことが明らかになったとき」に職権のみにより行われる上、実際はほとんど行われていませんので説明を省きます。
仮放免とは、収容令書または退去強制令書の発付により収容されている外国人に病気その他やむを得ない事情がある場合に、職権または規定する関係人からの請求でその収容を一時的に停止して、一定の条件のもと身柄の拘束を解く措置のことです。入管法によれば保証金の上限は300万円とされ、収容されている外国人の情状、仮放免の請求の理由となる証拠、性格、資産などを考慮して決定するとされています(多くの場合数十万程度)。
(2) 仮放免許可申請にどのような理由の主張が有効か
上記の表の「審査基準」の欄が空欄になっていることからも見てとれるように、仮放免の許否については入管法その他に具体的な定めがなく、どのような申請理由であれば仮放免が許可になるかといった具体的基準も公開されているわけではありません。ただし、基準の代わりに、許否判断にあたって考慮する事項が、入国管理局の内部規則である仮放免取扱要領において次のとおり定められています。
仮放免取扱要領第9条
入国者収容所長又は主任審査官は,仮放免許可申請書並びに第6条及び第7条に規定する書類の提出又は送付を受けたときは,被収容者の容疑事実又は退去強制事由及び前条に定める入国審査官等の意見のほか,次の点を勘案し,仮放免を許可することができる。
1. 仮放免請求の理由及びその証拠
2. 被収容者の性格,年齢,資産,素行及び健康状態
3. 被収容者の家族状況
4. 被収容者の収容期間
5. 身元保証人となるべき者の年齢,職業,収入,資産,素行,被収容者との関係及び引受け熱意
6. 逃亡し,又は仮放免に付す条件に違反するおそれの有無
7. 日本国の利益又は公安に及ぼす影響
8. 人身取引等の被害の有無
9. その他特別の事情
上記の仮放免取扱要領から、申請にあたっては、①仮放免を是非許可すべきといった必要性、および②仮放免を許可しても悪影響が生じないといった許容性を主張することが有益と考えられます。それぞれ具体的に考えられる例としては以下の通りです。
① 必要性の例
・(要領1より) 本人が退去強制事由にいずれも該当せず、収容すべきでないケース
・(要領2より) 本人が病気により治療が必要で、投薬を怠ると症状が悪化する等から収容すべきでないケース
・(要領3より) 本人に子供がおり、他に養育できる適切な人がいない等から収容すべきでないケース
・(要領4より) 本人が長期間収容されており、その身体的負担によりこれ以上収容すべきでないケース
・(要領9より) 本人が出国を希望していて、その準備のため収容を継続すべきでないケース
② 許容性の例
・(要領3、5、6より) 子供がいる、しっかりした身元保証人がいる等の理由で、本人に逃亡のおそれがないケース
・(要領6、9より) 在留特別許可が認められる可能性があるため、本人に逃亡する必要性がないケース
(3) 仮放免許可申請を有利に進めるために
仮放免制度の概要、および申請理由の主張例は上述の通りですが、その他仮放免許可申請を有利に進めていくために知っておくべき事項もいくつかあります。以下にご紹介いたしますので、合わせてご参照ください。
(i) 仮放免許可申請をするにあたって必要な申請書類の一つに、身元保証人の署名した身元保証書があります。この身元保証人については、入国管理局の発した通知により、仮放免許可申請の際に弁護士が身元保証人となる場合には、これを仮放免の許否にあたって積極的事由として適正に評価すること、保証金の決定にあたってもこれを評価するとされ、弁護士が出頭義務の履行に対する協力を表明する場合についても、これに準じた配慮がなされるとされています(平成22年11月10日法務省管警第261号法務省入国管理局警備課長通知)。つまり、仮放免許可申請にあたり弁護士が身元保証人になるか出頭義務の履行に協力を表明すれば仮放免の許否判断に有利になるということです。この意味でも、仮放免許可申請を弁護士に依頼することは申請者にとって非常に有益と思われます。
(ii) 入国管理局は昨今、一定の者に対して特別な配慮が必要との事務連絡を発しています。具体的には以下の通りです。
・①人身取引の被害者の疑いのある者、②未成年者、③傷病者等通院・入院等の必要のある者、④幼児・児童を監護養育している者、⑤その他社会的に弱者とみなされる者について、仮放免を行ったり、在宅での事件処理を進めるべきとする事務連絡(平成19年8月7日法務省入国管理局警備課課長)
・妊娠中の女性についても特段の配慮をすべきとする事務連絡(平成23年4月13日法務省入国管理局警備課課長)
上記の事務連絡に該当する場合は、これらを積極的に援用して仮放免の申請理由を主張していくことも有効だと思われます。
(4) 仮放免許可後に注意すべき点とは
仮放免許可申請を行い、晴れて仮放免許可がおりた後も、収容状態から解放された人が注意すべき事項があります。入管法によれば、「仮放免された者が逃亡し、逃亡すると疑うに足りる相当の理由があり、正当な理由がなくて呼出に応ぜず、その他仮放免に附された条件に違反したときは、仮放免を取り消すことができる」とされています。仮放免取扱要領によると、仮放免許可を受けた後の主な注意点は以下の通りです。
① 期間
仮放免の期間は、収容令書に基づく収容からの仮放免(収令仮放免)の場合と、退去強制令書に基づく収容からの仮放免(退令仮放免)の場合とで異なります。退令仮放免の場合は原則1か月ですが、病気治療等のため長期間の仮放免を必要とする場合は3か月以内の期間を定めることができます。収令仮放免の場合は、退去強制手続における最終的な判断が確定するまでになります。仮放免の期間を延長したい場合は、延長を求める必要性及び期間等を記した仮放免期間延長許可申請書を、身元保証人連署により提出する必要があります。
② 出頭義務
仮放免の期間中、仮放免の条件に従っているかどうかの確認のために入国管理局から呼出しがあり、呼出しを受けた場合は出頭する義務があります。出頭は「毎月1回又は仮放免の期間が満了する前の適当な日時」とされています。出頭することができないやむを得ない事情がある場合は、その事情を説明する書類を出頭の代わりに提出しなければなりません。
③ 住居・行動範囲の制限
仮放免期間中の住居は、仮放免許可申請時に申告した住居に制限されます。また、行動範囲についても、その申告した住居のある都道府県(および入国管理局への出頭時に都道府県を出る必要がある場合は入国管理局へのルート)のみに制限されます。申告した住居から転居する場合や、許可された行動範囲を超えて行動しなければならない場合、事前に一時旅行許可申請を行う必要があります。