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帰化とは簡単に言えば日本国籍を取得して日本人となることです。永住許可との違いは永住の場合はあくまでも外国人のままであり、永住者には参政権は認められていませんし、犯罪等を犯して退去強制事由に該当すれば退去強制の対象にもなります。しかし、帰化をすれば日本人となり参政権は認められ、退去強制の対象になりません。帰化をした場合、日本人として制限の少ない生活をすることができますが、日本では二重国籍は認められませんので、母国の国籍はなくなることになります。そのため、アイデンティティに関わる問題ですから慎重に考える必要があるといえます。帰化の中には一般的な要件を定めた普通の帰化と要件を緩和したものがあります。
帰化の要件について、国籍法では下記のように定めていますが、大雑把に言えばまず、普通の帰化についての要件が定められており、その後に一定の条件に該当する人は要件を緩和すること(簡易帰化)が規定されています。
一般的に、普通の帰化では
が必要になってきます。これは主に第4条に規定があります。⑦の日本語能力要件は国籍法には定められていませんが、日本人になることからいわば常識として日本語が必要になること、日本語ができないのであれば住居要件の定着性や生計要件にも疑義が生じることから、一定の日本語能力が要求されています。
【住居要件】
上記②⑤⑥であまり問題が生じることはありませんが、住居要件については、「引き続き5年以上日本に住所を有すること」が国籍法で要求されていますから、日本からの出国が多い場合や海外での滞在期間が長い場合等にこの引き続きの内容について問題が生じることがあります。また、どのような在留資格ビザでもいいというものではなく、就労系のビザで一定年数日本に滞在する必要があるということもありますので注意が必要です。
【素行要件】
素行要件については、国籍法では「素行が善良であること」が規定されていますが、その内容は抽象的なため、ご自身がこの要件を満たすかご不安な方が大勢いらっしゃいます。実務的な感覚で、この要件に問題が生じる場合というのは、犯罪を犯してしまった場合、交通事故交通違反をしてしまった場合、税金を納めていなかった場合、年金や健康保険料を納めていなかった場合等が多いように感じます。これらで引っかかってしまった場合にどんな場合でも帰化が認められないということではないので、まずは専門の弁護士に相談して解決策を探りましょう。追納すること等によって対応できる場合があります。また、前科等については消すことはできませんが、事件を起こしてしまった時に弁護士に相談に来ていただけると、前科を付かなくすることができる可能性があります。
【生計要件】
④の生計要件ですが国籍法は「自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること」と定めています。要するにしっかりと生活を維持する経済力があるかどうかという点が問題となります。独身者の場合には自分自身の収入で生活をしていけるかどうか、家族がいる場合には家族の収入も含めて生活していけるかどうかが問題となります。よくあるご質問として資産や貯金がどれくらいあった方がいいのかというのがありますが、貯金や資産はあった方がいいですが、それよりも安定した職と収入がある方が重要となってきます。そのため、無職の場合には帰化が認められる可能性は低くなりますので、就職してから帰化申請した方が良いといえるでしょう。
国籍法
(帰化)
第四条 日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によって、日
本の国籍を取得することができる。
2 帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない。
第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可す
ることができない。
一 引き続き5年以上日本に住所を有すること。
二 20歳以上で本国法によって行為能力を有すること。
三 素行が善良であること。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生
計を営むことができること。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと。
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政
府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若
しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したこ
とがないこと。
2 法務大臣は、外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができな
い場合において、日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると
認めるときは、その者が前項第五号に掲げる条件を備えないときでも、帰化
を許可することができる。
簡易帰化とは、法律上このような名称の帰化があるわけではなく、一般の帰化と比較して帰化の要件が緩和されている帰化を総称して簡易帰化と呼称しているにすぎません。簡易帰化について国籍法では下記のように規定されています。なお、第8条の帰化は大帰化と呼ばれていますが、これが適用された例がないため説明は割愛します。
【第6条の簡易帰化の要件】
6条1号に当てはまるのは、両親が外国に帰化をして自分も外国籍になっている場合です。日本人家族が外国に移住して帰化し外国籍をとったが、子は日本国籍を取得したいとい場合が該当すると考えられます。
6条2号については、在日朝鮮人、韓国人の方の多くがこれに該当すると考えられます。
6条3号についても在日朝鮮人、韓国人の方の多くがこれに該当するといえます。10年以上日本に居住し、1年以上の就労経験がある場合に帰化が認められるのは、この要件に該当するからといえます。
6条については、普通帰化で求められる5年の住居要件が緩和されることになります。
【第7条の簡易帰化の要件】
7条前段については、日本人と結婚している外国人が当てはまります。居住期間は乾坤の戦後を問いませんので、日本に3年以上住んでいる場合、日本人と結婚した段階で帰化の要件を満たすことになります。
7条後段についても、日本人と結婚している外国人があてはまります。外国で結婚生活を送った後、来日して1年以上日本で住んでいる場合等が典型例といえます。
7条に該当する場合には、普通許可で求められる住居要件と能力要件が緩和されることになりますので、引き続き5年以上日本に住まなくても大丈夫ですし、20歳未満でも他の要件を満たせば帰化の要件を満たすことになります。
【第8条の簡易帰化の要件】
8条1号に該当するのは、両親だけ先に帰化して日本国籍を取得して後に子供が帰化する場合、日本人の子であるが日本国籍を選ばなかった人が後に帰化する場合等が該当します。
8条2号に該当するのは、未成年のときに親の再婚などにより連れ子として日本に来た外国人の方で、来日時に義理の親と養子縁組したような場合が該当します。
8条3号に該当するのは、外国籍になった日本人が再度日本国籍に戻るような場合が該当するといえます。
8条に該当する方は、普通帰化で要求される住居要件、能力要件、生計要件が緩和されます。
第六条 次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについ
ては、法務大臣は、その者が前条第一項第一号に掲げる条件を備えないとき
でも、帰化を許可することができる。
一 日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き3年以上日本に住
所又は居所を有するもの
二 日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所若しくは居所を有し、
又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの
三 引き続き10年以上日本に居所を有する者
第七条 日本国民の配偶者たる外国人で引き続き3年以上日本に住所又は居所
を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その
者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも、帰化を許可
することができる。日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から3年を経過
し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するものについても、同様とす
る。
第八条 次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第
五条第一項第一号、第二号及び第四号の条件を備えないときでも、帰化を許
可することができる。
一 日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの
二 日本国民の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時
本国法により未成年であつたもの
三 日本の国籍を失った者(日本に帰化した後日本の国籍を失った者を除
く。)で日本に住所を有するもの
四 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き
続き3年以上日本に住所を有するもの